目次
ザンダー・シャウフェレはPGAツアーのトッププレーヤーの一人。メジャーは無冠ながら、全米オープンは17年5位、18年6位、19年3位、20年5位と、4年連続でトップ10入りを継続中。全英オープンは18年2位、全米プロ選手権は20年10位。マスターズでは19年に2位と安定した強さを誇り、いつメジャーをとってもおかしくないと言われているプレーヤーです。そして2021年の夏、ついに東京2020オリンピックの金メダルというビックタイトルをつかみとりました。今回はザンダー・シャウフェレについて紹介します。
ザンダー・シャウフェレってどんな人?プロフィール紹介
この投稿をInstagramで見る
ザンダー・シャウフェレは、1993年米国カルフォルニア州サンディエゴの生まれ。ゴルフは、父・ステファンさんの影響で13歳から始めました。父・ステファンさんはフランス人とドイツ人のハーフで、10種競技の陸上選手でドイツ代表としてオリンピック出場を目指していましたが、飲酒運転のドライバーにはねられるという不幸な交通事故により、左目を損傷してしまい選手生命を絶たれてしまいます。その後、米国のサンディエゴに渡ってゴルフのティーチングプロに転身しました。
シャウフェレは、サンディエゴ州立大学を卒業した後、2015年にプロへ転向すると、2017年の「ザ・グリーンブライアークラシック」で米ツアー初勝利を飾ります。その年のプレーオフ最終戦「ツアー選手権」でも2勝目を挙げ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。その後、2018年の「WGC HSBCチャンピオンズ」、2019年の「セントリートーナメントofチャンピオンズ」でそれぞれ勝利し、ツアー通算4勝をあげています。
「シャウフェレ」「ショーフリー」「シャフリー」どれが正しいの?
シャウフェレの英語表記は「Schauffele」です。「Schauffele」は、本来の英語の発音を日本語の発音に直すのが難しい名前です。一般的には「シャウフェレ」という表記や読み方が使われていましたが、「ショーフリー」や「シャフリー」と表記・発音されることもあります。東京2020オリンピックでは「シャフリー」と表記・発音されていましたが、これはNHKの基準で決めたものだそうです。英語の発音と日本語の違いの例では、南アフリカのルイ・ウーストハウゼンが、「ウエストヘイゼン」と呼ばれたりするケースが。どれが正しいかは、ジャック・ニクラスのようにプロ本人に確認するしかなさそうです。
シャウフェレは日本に縁のあるプレーヤー
この投稿をInstagramで見る
右端はお兄さんのニコ、その隣がお母さんのピンイー、後ろはお父さんのステファン、前にいるもう1人の女性は奥様のマヤ・ローさん
シャウフェレの母ピンイーさんは日本育ちの台湾人です。もちろん日本語はペラペラで、中国語も堪能です。父はフランスとドイツのハーフですから、シャウフェレは幼少期にはフランス語、ドイツ語、日本語、中国語、英語を混ぜて使っていたそうで、学校の先生から「お宅の子供の言葉が理解できない」と言われたこともあったといいます。現在でも、シャウフェレはあいさつ程度の日本語は話せるそうで、松山英樹が優勝したマスターズでは、優勝争いを繰り広げる緊迫した中でも日本語の冗談も言って場をなごませてくれていたようです。祖父母は90歳近くになるそうですが、今も日本の渋谷区に在住されています。このような日本との縁があるため、シャウフェレ自身何度も日本を訪れています。今回の東京オリンピック大会期間中は“バブル”を維持するため外部の人間と接触することはできなかったのですが、終了後の出国前に成田のホテルで特別な対応により祖父母と再会できたということです。とても幸せな時間を過ごせたことでしょう。
マスターズでは松山英樹優勝の立役者に
松山英樹が制覇した2021年のマスターズで、シャウフェレと松山は第3ラウンドと最終ラウンドの2日間を同組で回りました。1993年生まれのシャウフェレと1992年生まれの松山は、同年代のPGAツアープレーヤーとしてライバル同士です。マスターズにおいても同組で優勝争いを繰り広げました。3日目は松山が7アンダー65の猛チャージ。松山が11アンダー、それに対するシャウフェレは7アンダーの2位タイで最終日を迎えます。最終日の前半ボギーが続き、松山と差が広がったシャウフェレですが、後半12番から15番までを4連続バーディーとして松山に2打差まで詰め寄ります。しかし、次の16番ショートホールで、ピンをデッドに狙い、完璧に放ったショットが風の読み違いで池ポチャ。このホールをトリプルボギーとしてしまい力尽きました。ホールアウト後は「ヒデキはすごい。ミスのない素晴らしいプレーで、王者の戦いぶりだった」と、松山をたたえています。
ラウンド中、松山のナイスショットには「ビューティフル」「グッドショット」と声をかけ、時おり日本語のジョークを交えながら、松山を気持ちよくプレーさせてくれたといいます。勝ちたいがゆえに同伴者の集中力をそぐような行動をとる選手もいるそうですが、シャウフェレは、最後までクリーンに正々堂々とプレーをしました。お互い競い合いながらも、松山は気分もリズムもよく回ることができたので、シャウフェレと2日間一緒に回ったことが、松山が優勝することができた要因の一つになったのではないかと言われています。
オリンピックで金メダルを獲得
この投稿をInstagramで見る
シャウフェレにとってオリンピックは特別な大会だったといいます。それは、父・ステファンさんの夢でもあったからです。十種競技でオリンピックを目指した父・ステファンさんの思いも背負って、シャウフェレは東京2020オリンピックが開催される霞ヶ関カンツリー俱楽部に向かいました。
初日に3アンダーの12位タイとまずまずのスタートを切ったシャウフェレは、2日目には2イーグル6バーディー、2ボギーの「63」をマーク。通算11アンダーで一気に単独首位まで浮上しました。3日目も安定したゴルフを続け、この日3アンダーの通算14アンダーで首位をキープ。そして、3日目スコアを伸ばし2位につけた松山英樹と、最終日最終組を回ることに。まさにマスターズの再現です。これまでのツアー4勝がすべて逆転でのタイトルだったシャウフェレにとっては、初の逃げ切り優勝ができるかへの挑戦でもありました。最終日、松山とシャウフェレは二人ともなかなかスコアが伸ばせず後続に追い上げられます。それでも18アンダーまで伸ばして、首位をキープしていたシャウフェレでしたが、バーディーが欲しい14番パー5でティショットを右ブッシュに打ち込んでしまいアンプレアブルを宣言し、このホールをボギーとして通算17アンダーへ後退。この時点で、最終日「61」と驚異的なスコアで回り、一気に通算17アンダーまで伸ばしたスロバキア代表のロリー・サバティーニと並んでしまいます。それでも17番をバーディーとして再びリードしたものの、迎えた最終18番で、またもやティショットを右に曲げてピンチを迎えることに。しかし、そこから冷静にレイアップした後のショットでピン上約1.5mにつけます。簡単なパットではありませんでしたが、これをしっかり沈めてパーとし、念願の金メダルを獲得しました。
シャウフェレにとって、縁のある日本で開催されるオリンピックでの勝利は感慨深いもので、なおかつ、父親の思いも背負ってのうれしい勝利。また、コロナ禍の制限により、開会式で父・ステファンさんと一緒に歩く夢がかなわなかったことを残念がっていたそうです。次回のオリンピックにも出場して、次は必ず開会式に連れて行ってあげたいと話しています。
シャウフェレのクラブセッティング
東京2020オリンピック最終日のシャウフェレのクラブセッティングを紹介します。
ドライバー | キャロウェイ エピック スピード トリプルダイヤモンド(9度) |
シャフト | ツアーAD BB |
フェアウェイウッド | キャロウェイ エピック スピード トリプルダイヤモンド(3番15度) キャロウェイ マーベリック サブゼロ フェアウェイウッド(7番20度) |
アイアン | キャロウェイ APEX TCB(4番~PW) |
ウェッジ | キャロウェイ JAWS MD5(52度) タイトリスト ボーケイデザイン SM6ウェッジ(56度) タイトリスト ボーケイ SM8 ウェッジ(60度) |
パター | オデッセイ オー・ワークス パター #7CH Red |
ボール | キャロウェイ クロムソフト X LS プロトタイプ |
彼のセッティングはいたってシンプル。ドライバーの次にフェアウェイウッドを2本、そしてアイアンは4番から入れています。ウェッジは52・56・60度の3本。最近流行りのユーティリティは入れておらず、トラディショナルな組み合わせと表現しても良いでしょう。
※掲載のモデルはすべてがプロが使用するモデルと完全に同じものではありません。ご購入の際はよくご確認をお願いします。
ドライバーは、キャロウェイ EPICシリーズのツアーバージョンとして展開されているエピック スピード トリプルダイヤモンド。
通常のEPICシリーズよりもヘッドが小ぶりで、構えた時もコンパクトな印象。つかまり具合も控え目で、操作性の高いボールが打てるようです。シャフトは、グラファイトデザイン社のツアーAD BB 7 Xを使用しています。
2本入れているフェアウェイウッドのうち、7番ウッドに採用しているのはキャロウェイ マーベリック サブゼロ。ユーティリティを入れていないことを考えると、7番ウッドで打ち分ける飛距離の幅は大きくなっています。ちなみに、もう1本の3番ウッドは長めのシャフトで飛距離を重視した仕様になっているようです。
シャウフェレは基本的には契約しているキャロウェイのクラブを使用していますが、ウェッジの56度と60度はタイトリストのボーケイを使用しています。タイトリストのボーケイウェッジというと上級者が使いこなしているイメージがありますが、様々なタイプのゴルファーに合ったモデルが用意されているので、初心者からプロまで使えます。
【関連記事】
シャウフェレのスイング
この投稿をInstagramで見る
身長は178センチと、PGAツアーの中では小柄であるシャウフェレですが、その飛距離は300ヤードを超え、PGAツアーでも飛ばし屋の上位に位置します。トップから右肩よりも低い位置にシャフトが下りてくるので、シャウフェレの基本的な持ち球はドローで、状況に合わせてクラブ軌道を変化させて様々な弾道を操る高い技術を持っています。
テイクバックはゆっくり気味で、見た目にはスイングの速さは感じらませんが、しっかりと体感を使っているので体のぶれも少なく、シャフトのしなり戻りのエネルギーをしっかり使えています。その結果、大きな飛距離を生み出すことができるのです。また、テイクバックで、左腕が地面と平行になるくらいに来ても腕が伸びたままで、ひじも手首も曲がりが少なく、体の回転でクラブを上げていることがわかります。手先でなくしっかり体の回転でクラブを上げているため、方向性も安定するのです。さらに、左手首を手のひら側に折りながら、トップからインパクトを迎えるところも特徴的なところ。インパクトの時にこの形ができていれば、フェースが閉じるのでしっかりつかまった球を打つことができます。決して大きくはない体から大きな飛距離を生み出すこのあたりのスイングのポイントは、アマチュアゴルファーも大いに参考にしたいところです。
シャウフェレの最新情報
オリンピック終了後はすぐに米国に戻り、休む暇もなく8月5日から米国テネシー州で開催されたWGCフェデックス セントジュード招待に参戦しました。結果は残念ながら46位に終わっています。ちなみにこの大会の松山英樹は好調で、プレーオフに残ったものの惜しくも敗れ2位でした。
2021年10月現在、ザンダー・シャウフェレは世界ランク5位です。この先しばらくは、PGAツアーのトッププレーヤーとして上位争いを繰り広げてくれるでしょう。まずはメジャー1勝目を目指していくのだと思われます。今まで出場したメジャー15回中でトップ10に8回入っている実力と、オリンピック金メダルを獲得して勢いづいた今の状態ならメジャー制覇もそう遠くはなさそうです。そして、10月21日に開幕するZOZOチャンピオンシップではマスターズ、オリンピックに続いて松山英樹と同じ組でプレーすることが発表されました。日本のギャラリーの前でどのようなプレーを見せるか楽しみです。
まとめ
今、注目のザンダー・シャウフェレについてのご紹介でした。日本にも深い縁があるザンダー・シャウフェレは、日本人にとっても親近感の持てるPGAプレーヤーです。マスターズや東京オリンピックで活躍したその実力と、クリーンなプレースタイルと誠実な人柄を見てファンになった人も多いのではないでしょうか。そして、日本のゴルフファンとしては、再び松山英樹とのメジャーの優勝争いを見せてもらいたいですね。シャウフェレのますますの活躍を期待しましょう。
【関連記事】