2020-21年シーズンに大きな飛躍を遂げた小祝さくらプロですが、2021年9月に稲見萌寧プロに抜かれるまでは賞金ランク1位に座り、女子ツアーを牽引してきました。黄金世代ではやや遅咲きとなりましたが、小祝さくらプロとはどんな人物なのでしょうか?北海道のトップジュニアとして君臨したアマチュア時代やプロでの戦績、そしてクラブセッティングなどをまとめてみました。
小祝さくらプロってどんな人?
1.アマチュア時代
小祝さくらプロは1998年4月15日生まれの23歳です。北海道北広島市の出身。北広島市は札幌市に隣接し、男子トーナメントのANAオープンが開催される札幌ゴルフ倶楽部輪厚コースや、2019年まで女子トーナメントの北海道meijiカップが行われた札幌国際カントリークラブ島松コースは北広島市内にあります。最近では、23年に北海道日本ハムファイターズの新球場として開業する「エスコンフィールドHOKKAIDO」の所在地として有名ですね。
小祝さくらプロは8歳でゴルフを始め、小学校6年生だった10年の北海道ジュニアゴルフ選手権(11歳以下の部)を制し、早くも頭角を現します。その後も北海道高等学校ゴルフ選手権(12年)、北海道ジュニアゴルフ選手権(13・14・16年)、北海道女子アマチュアゴルフ選手権(14・16年)などタイトルを重ね、北海道ではトップジュニアとして君臨。また、16年の日本ジュニアゴルフ選手権競技(女子15歳~17歳の部)では3位に入賞し、その名を全国に広めました。
参考URL: http://www.jga.or.jp/jga/jsp/players/profile_30616.html
2.プロ入り後
2017年のLPGA最終プロテストは、初日5オーバーで86位タイと大きく出遅れ。しかし、2日目以降はアンダーパーで回り、57位タイ→29位タイ→19位タイと順位を上げ、「上位20位タイ以内」という難関を突破して一発合格しました。プロ合格を果たすとすぐに、家具・インテリア用品を取り扱う株式会社ニトリと所属契約を締結します。ニトリも北海道発の企業で、10年から女子トーナメントのニトリレディスゴルフトーナメントをスポンサード。小祝さくらプロはアマチュア時代の14年から出場し、15年にはベストアマチュア賞に輝きました。
ルーキーイヤーの17年は出場3試合にとどまり、賞金シードには届きませんでしたが、同年末のファイナルクォリファイングトーナメントで9位に入り、翌18年ツアー前半戦の出場権をGET。そして、同年5月の中京テレビ・ブリヂストンレディスオープンで2位タイに入賞するなど7500万円あまりの賞金を獲得、賞金ランク8位に入り初シードを果たしました。
19年には、7月に行われたサマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメントで待望のツアー初優勝を飾ります。1998年度(98年4月〜99年3月)生まれを指す黄金世代では、勝みなみプロ、畑岡奈紗プロ、大里桃子プロ、新垣比菜プロ、河本結プロ、渋野日向子プロ、原英莉花プロに続く8人目の勝利となりました。
黄金世代の中ではやや遅咲き(といってもプロ3年目、まだ21歳なのですが)となった小祝さくらプロですが、2020-21年シーズンに大きく羽ばたきます。20年の4戦目となった9月のゴルフ5レディスプロゴルフトーナメントを、大会レコードを更新する通算17アンダーで通算2勝目。
そして21年初戦、3月のダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントを制すると、2週後のTポイント×ENEOS ゴルフトーナメントも勝利。さらに8月には、NEC軽井沢72ゴルフトーナメント、CAT Ladies2021と2週連続優勝を飾りました。
参考URL: https://www.lpga.or.jp/members/info/1003044
小祝さくらプロのクラブセッティング
ダンロップとクラブ使用契約を結ぶ小祝さくらプロ。2021年8月のCAT Ladies2021時点では以下のようなセッティングになっています。
ドライバー | スリクソン ZX5 ドライバー(9.5度) |
フェアウェイウッド | スリクソン ZX フェアウェイウッド(3番15度、5番18度) |
ユーティリティ | スリクソン Z H85 ハイブリッド(3番19度、4番22度) |
アイアン | スリクソン Z585 アイアン(5番~PW) |
ウェッジ | クリーブランド RTX-3(ブレードタイプ)(50、58度) |
パター | ワールド山内 プロトタイプ |
ボール | スリクソン Zスター XV |
※掲載のモデルはすべてがプロが使用するモデルと完全に同じものではありません。ご購入の際はよくご確認をお願いします。
クラブ選びの基準について、小祝さくらプロは月刊ゴルフダイジェスト21年8月号で次のように話しています。
「クラブを選ぶ際に食わず嫌いはなく、自分のイメージと弾道が合っていればすぐ替えることはあります。でも、一度気に入ったら替える必要性を感じなければ、替えません」
スリクソン ZX5 ドライバー
ドライバーのスリクソン ZX5は、剛性の高いエリアと低いエリアを交互に配置した4層構造が大きなたわみを生み出し、反発性能が大幅に向上しています。ヘッド形状はやや大きめの投影面積で安心感があり、大きな飛距離と寛容性を両立させたドライバーです。
初めて実戦に投入した21年のダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントで、いきなり優勝という最高の結果を残しました。
スリクソン ZX フェアウェイウッド
フェアウェイウッドはスリクソン ZXです。ドライバーと同じ4層構造を採用し、高弾道と大きな飛びを実現しています。
スリクソン Z H85 ハイブリッド
ユーティリティのスリクソン Z H85 ハイブリッドは、18年から使い続けています。ヘッドの大型化とフェースの薄肉化で反発エリアを拡大し、安定した方向性を実現。適切な重心設計により、高い打ち出しと安定したスピンでグリーンを狙えます。
スリクソン Z585 アイアン
スリクソン Z585 アイアンも18年発売のモデルです。フェースのたわみやすさと大きな反発性能、ストロングロフトにより圧倒的な飛距離を実現し、なおかつ許容性も高いポケットキャビティタイプです。
クリーブランド RTX-3
ウェッジはクリーブランド RTX-3のブレードタイプを使用。飛距離性能や方向安定性、スピン性能、そして打感が向上し、抜けのよさとキレのよいショットを生み出します。
ワールド山内 プロトタイプ
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山内雄矢社長(右)
初めて投入した21年8月のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント初日に6連続バーディをマークし、優勝の原動力となったパターはワールド山内製です。同社は、小祝さくらプロの実家そばにある北海道北広島市の会社で、金属製品の加工などを手がけています。自身もシングルゴルファーである山内雄矢社長が「World Craft Design」というゴルフブランドを立ち上げました。
ベースは「WY700」というモデルで、ツノ型のヘッド形状をしています。デザインは、「『夢かわいい』のが好き。ユニコーンとかのイメージ」という小祝さくらプロのリクエストに応え、ソール面にはユニコーン、星、ハート、虹を彫刻。ヘッドに描かれたアライメント用のドットも、星に変更されました。また、バックフェースに刻まれた「Sakura」の「a」も、中が星の形になっています。
航空機の部品に使われる素材など、複数の金属を配合したステンレス製ヘッド。加工にも手間がかかるため、材料費と人件費がかさみ、基本価格は110万円(税込)と高額です。また、小祝さくらプロとまったく同じパターを市販するとしたら、価格は330万円になるそうです。
スリクソン Zスター XV
ボールはスリクソン Zスター XV。飛距離性能とスピンコントロールが進化し、風に強いのも特徴です。ドライバーと同じく、初めて使ったのが21年のダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントで、勝利に貢献しました。
小祝さくらプロの強さの秘密
身長158センチとそれほど体格に恵まれたわけではない小祝さくらプロですが、強さの秘密はどこにあるのでしょうか。
イーグル数 | 11 | 1位 |
バーディー数 | 545 | 1位 |
60台のラウンド数 | 51 | 1位 |
パーブレーク率 | 20.1231 | 3位 |
平均ストローク | 70.7031 | 3位 |
パーセーブ率 | 88.1650 | 3位 |
バウンスバック率 | 19.9357 | 5位 |
年間トップ10回数 | 18 | 6位 |
リカバリー率 | 66.3212 | 8位 |
平均パット数(パーオンホール) | 1.7847 | 8位 |
サンドセーブ率 | 49.1071 | 13位 |
※数字はすべて2021年11月7日
イーグル数、バーディー数、60台のラウンド数、パーブレーク率、バウンスバック率で上位につけることから、爆発力を秘めたアグレッシブなプレースタイルであることがわかります。一方で、平均ストローク、パーセーブ率も高く、容易にスコアを崩さない結果が、年間トップ10回数6位という安定した成績につながっています。リカバリー率、平均パット数(パーオンホール)、サンドセーブ率も上位で、ショートゲームの上手さも光ります。
持ち球はドローボールで、「ドライビングディスタンス」は240.25ヤードの23位。上位22人のうち、小祝さくらプロと同じ身長160センチ未満の選手が2人(勝みなみプロ=157センチ、西郷真央プロ=158センチ)しかいないことを考えると、飛距離面でも健闘しているといえそうです。
小祝さくらプロは18年から全試合に出場しています。全国を飛び回るツアー生活においては健康管理も求められますが、体の丈夫さでも小祝さくらプロは抜きん出ています。
小祝さくらプロのスイング
小祝さくらプロは、高校3年生のときから辻村明志(つじむら・はるゆき)コーチの指導を受けています。5勝の小祝さくらプロを筆頭に、吉田優利プロが2勝、上田桃子プロも1勝と、辻村明志コーチ門下の選手が2020-21年シーズンに8勝を挙げています。それでは、小祝さくらプロのスイングの特徴を見ていきましょう。
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アドレスは、オーソドックスなスクエアグリップでクラブを握り、ゆるみのない絶妙なバランスで構えられています。
テークバックでは、両腕と両肩のラインでできた三角形をキープしたまま、上半身をねじっていきます。このとき右股関節に体重が移っていきますが、右足内側でしっかり受け止めることでスエーを防ぎ、背中はターゲットを向きつつも腰のラインは45度に抑え、飛びのエネルギーとなる捻転差を生み出しています。
トップからの切り返しでは、大きな体重移動は行っていません。アマチュアの方が体重移動を意識しすぎると、ダウンで左サイドに突っ込むような動きになるので、小祝さくらプロの切り返しを参考にしてください。
インパクトからフィニッシュにかけても、クラブが体から離れず、きれいにターンしています。スイング軌道が安定した、再現性の高いスイングです。
参考URL: https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17474112
https://www.regina-web.jp/lesson/26194/
まとめ
小祝さくらプロのプロフィールやクラブセッティング、強さの源、スイングなどを紹介してきました。高い技術力に加え、頑丈な体が安定した成績を残す秘訣であることがわかります。また、小祝さくらプロ専用にチューニングされた「330万円パター」も、バーディーラッシュを生む一因となっています。小祝さくらプロのこれからの活躍も応援しています。