「ゴルフ接待」というと、若いビジネスパーソンにとっては「時代遅れ」といったイメージを持つ方も多いかもしれませんね。ですが、現在もゴルフ好きの役員や幹部とのプライベートなゴルフは、ビジネスパートナーとしての深い人間関係を築くベストな方法の一つです。都会から離れた完全にプライベートなゴルフ場は、お互いの信頼関係を築く上で、これ以上ないベストな環境と言えます。
この記事では、広告代理店で接待と被招待合わせて400回以上経験する筆者が、成功と失敗の経験を踏まえてゴルフ接待の極意について紹介します。ゲストに喜んでもらうためにやるべきことや心得ておきたいマナーなどを解説しますので、こちらを参考にぜひゴルフ接待を成功させましょう。
ゴルフ接待は100切りしてから
ゴルフ接待は「ボギーがベスト」と昔からよく言われます。ゲストがシングルクラスの腕前で、あるホールをパーでまとめたとき、ホストは一つ打数の多いボギーで回ることができればホストとしての資格ありという意味です。加えて「ダボまではOK」ともいわれています。各ホールをボギーとダボを繰り返して1ラウンド回れば、トータルスコアは99。ゴルフ接待は「100切りしてから始めろ」という言葉の意味はこのあたりから来ているのです。
練習とラウンドを重ねて100切りを達成したあなたはゲストを接待できる準備が整いました。ゴルフ接待の目的は日頃お世話になっているゲストに、職場を離れた自然の中で思い切りプレーを楽しんでいただくこと。おもてなしの基本スピリッツはゲストに心の負担をかけない「自然体の心遣い」です。ゲストに喜んでいただくためにはホストもプレーを楽しむことがゴルフ接待のマナーなのです。
【準備編】ゴルフ接待で事前にするべきこと8つ
ゴルフ接待は前日までの準備が大事です。接待する側の人柄や会社の格式すべてをゲストに見られる覚悟で計画を練りましょう。準備のポイントを8つまとめましたので、参考にしてください。
1. ゴルフ接待は2対2が理想
コンペと違って、1組のゴルフ接待ではゲストが2人、ホストも2人という組み合わせが理想です。コミュニケーションを図る上でも2対2の組み合わせがおすすめ。先方には日頃のあなたの仕事相手が何人かおられるはずです。ゴルフ経験者で親しい方をみつけて、ゲストの人選を相談しましょう。もしあなたがゴルフ接待が始めてであれば、不慣れであることを正直に伝えれば、親身になって協力してもらえるでしょう。
2.気楽に楽しめるやさしいコースを選ぶ
先方の人選が決まれば、次はゴルフ場選びです。ゴルフコースはゲストの技量や好みなどをお聞きして、アクセスに無理のないコースを探しましょう。普段からいろいろなゴルフ場をラウンドして候補のコースを選んでおくとか、接待に相応しいゴルフ場の情報を集めておくことをおすすめします。
特にゲストの希望がなければ、山岳コースなど難易度の高いコースよりも広くてフラットな難易度の低いゴルフコースが無難です。OBのよく出る難関コースは懇親とはいえ、プレーに余分なストレスがかかります。ゴルフ接待の一日は気楽なプレーが良いかもしれません。上司のホームコースや、あなたの会社がよく使う”無理の利く”コースを選ぶと接遇するのになにかと便利です。
3. ご案内状
人選とゴルフコースと日取りが決まったら、案内状を手紙やメールでお届けします。手紙の場合の案内状の書き方は接待用の定型文があなたの会社の秘書や総務にあるかもしれません。社名入りの封筒と便箋があれば、それを使って案内状を作成します。差出人のところは上司の名義で、あなたは世話係として記名。接待当日の緊急連絡用にあなたの携帯電話番号も記入が必要です。
もしあなたがゲストとそれほど親しい間柄でないとしたら、良い機会ですので、案内状を持参して事前の御挨拶に伺うのも良いでしょう。あなたの上司が同行できないときには「上司の○○が楽しみにしております」と伝えます。また、ゴルフの後に懇親タイムを予定していただくことが念押しのポイントです。
4.経費はこちらが負担することをはっきり伝えておく
ゴルフコースへのアクセスやドレスコードの説明に加えて、当日の経費は弊社負担であることをはっきりと先方に伝える必要があります。たまに起きることですが、単に懇親会と伝えると、費用はそれぞれの会社負担とか、個人の自己負担とか間違って受け取られることがあります。勘違いのまま進むと精算の時に押し問答になって、なんのための懇親か分からなくなります。案内状にも招待であることを明記してお渡ししましょう。
5. 迎車の手配
ゴルフコンペでは車の用意は各自で手配をするのが普通です。しかしゴルフ接待のときは、迎車を用意する意向があることを先方に伝えるのが良いでしょう。「お足の方は大丈夫でしょうか?」と訊ねて、ゲストの足が不便であるときは当方で車を用意して送迎するようにしましょう。
6. ベテランキャディさんの手配
最近はセルフプレーがあたりまえのラウンドスタイルになってきましたが、ゴルフ接待に欠かせないのがベテランキャディさんの存在です。ゲストのボール探しやピンまでの距離などラウンド中のゲストサービスをキャディさんが一緒にやってくれますので、その分あなたはゲスト二人への心遣いを行き届かせることができます。また、ゲストにもキャディさん付きのゴルフを楽しんでいただけます。ゴルフ接待であることをゴルフ場のオフィスに伝えて、コースをよく知ったベテランのキャディさんを事前にお願いしておくことが肝要です。
7. お土産の手配
帰りにお渡しするお土産の準備も忘れずに行いましょう。ゲストのネーム入りのゴルフボールやマーカーなど、いくつあっても困らないゴルフ用品は特におすすめです。また、ゲストのご家族が喜ばれる日持ちのする洋菓子も良いかもしれません。お土産はホストによってこだわりや好き嫌いがありますので、事前に上司に相談しておくのが良いでしょう。
8. 前日(前々日)に電話かメールで確認の連絡をする
ゴルフ接待の前日か前々日に、電話やメールで「明日(明後日)はよろしくお願いいたします」とゲストの相談相手に確認の連絡を入れましょう。ラウンド予定の前日になると、相談相手の方も、不備がないかどうかなにかと不安になるものです。あなたからの確認の連絡が入ると、きっと安心されますよ。天気予報も調べておいて話題にしましょう。
【当日編】ゴルフ接待当日するべき動きと心得&マナー
接待上手なゴルファーはラウンド中に特に際だったことをしません。“自然体で行く”が最上のおもてなしです。あたりまえのマナーを守って、ゲストにプレーを楽しんでもらい、本人もゴルフを楽しんでいます。でもさりげなくいろいろな心遣いをしているのです。ラウンド当日朝の動きから、ラウンド中のホストとして知っておくべきマナーや、気を付けるべきポイントについて解説します。
1. ホストの服装は控えめに
ゴルフ接待でゲストより派手な服装はNG。主役はゲストです。ゴルフ場のドレスコードを参考にして控えめな服装にしましょう。クラブハウス内では男性ならブレザーに襟付きシャツ。スーツはフォーマルなので規定内ですが、職場の延長のようになってしまうため避けましょう。プレー時は襟付きポロ風のシャツにスラックスなど、落ち着いたスタンダードな服装で準備しましょう。
2.ゲストは玄関でお出迎え
大事なゲストは必ずゴルフ場のクラブハウスの玄関でお迎えしましょう。そんなことはあたりまえと言われそうですが、現実にはゲストがホストより早くゴルフコースに到着してしまうことがよくあります。交通事情を考えて早めに出発したとか、練習時間が欲しいとか、ゲストの性格とかいろんな事情が重なったときです。
ゲストの先着はホストとして大失態です。たとえばあなたが招待される側だったとしましょう。どれほど予定より早く到着したとしても、フロントにホストの顔が見えないのは寂しいものです。初めてのゴルフ接待で、ゲストとの顔合わせです。ホストは着替えを済ませて、少なくとも1時間半前には玄関に立つようにしましょう。ゴルフ接待は“おはようございます”から1日が始まります。
3. スタート前にボールをプレゼント
スタートホールでホストからゴルフボールを1スリーブ(3個入り)プレゼントされると、たとえ3個でもゲストとしては嬉しいものです。無くなると困るので、ボールは余分にバッグに入れておくのですが、ゴルフは先が読めないので予備のボールがあると安心です。ブランドものや派手なカラーボールも話題作りに良いかもしれません。
スタートホールでティーショットの順番を決めるのはホストの仕事です。番号の入ったくじ引きのスティックをゲストの上司から順番に引いてもらいましょう。面倒であれば懇談中の4人の真ん中にあなたのティを飛ばす方法があります。「時計回りですよ」と言っておいてティの先が指している人をオナーにして、右回りに順番を決めていきます。
スタートホールのドライバーショットはだれでも緊張するので、可能であれば冗談を言って少しでも雰囲気をほぐせると良いですね。
4 ゲストがプレー中は決して動かない
ゲストがボールに向かってアドレスをとったとき、同伴者はたとえどこにいても動くことを止めて、静止しなくてはなりません。人間の目線は遠く離れていても少しでも動く物があると気がつき、気になります。人によって気になる程度の差はあるでしょうが、このことはゴルフマナーの基本中の基本です。ゲストがアドレスに入ったら、ホストはどこにいても決して動かないようにしましょう。物音を出したり、小声のお喋りなどはゴルファー失格です。
5. ゲストのプレーを必ず見守る
接待上手なホストは同伴者のプレーをしっかり見ています。特にゲストがショットしたボールはロストボールにならないように最後まで見届けましょう。深いラフに入ったボールはいざ近づくと、みつからないことがよくあります。着地したボールに近いところに目印をみつけておくとボール探しが楽です。白杭とか、カート道からの距離とか、ラフのうねりの形とか何か目印をみつけましょう。
ボールの行方の確認だけでなく、クラブの選び方やコース戦略といったブレーンワークもスキルの一つとして上級者はお互いに観察をしています。戦略の立て方にもプレーヤーの人柄や個性が現れます。ゴルフのプレーを通じてリレーションを深めるためには、ホストがゲストのプレーをきちんと見守っていることがエチケットの基本です。“よそ見”は不可です!
6. 自分のプレーは素早く済ませる
一流のホストプレーヤーは自分のプレーの順番がきたら素早くショットを済ませます。クラブ選択や素振りを済ませて準備ができているのです。もちろんホストもプレーを楽しみましょう。ホストが共にプレーを楽しんでいる姿はゲストへの礼儀でもあります。でもスコアを気にして自分のOBボールを探すのに時間を掛けたり、素振りを何回も繰り返すのは御法度ですよ。
7. アドバイスをやたらとしない
上手なホストはやたらとゲストにアドバイスをしません。ホールの特徴や危険な箇所をお知らせする程度です。あなたがコースでラウンドの経験があっても、ホールの説明はキャディさんに任せるのが良いでしょう。ゴルフ接待はレッスンラウンドではありませんので、スイングについてのアドバイスは不要です。ただし、あなたがゲストからアドバイスを受けるのはご愛敬で良いかもしれませんね。
8. 結果をよく見て“ナイスショット!”
自然と口から出る“ナイスショット!”は言われた方も気持ちのいいものです。ただし、ナイスショットの受け止め方はゲストのハンディキャップによって異なります。あなたから見たナイスショットでも、ゲストご本人は思い通りのショットではなくてご不満かもしれません。ナイスショットが途中から曲がって深いラフに入ったり、最悪のケースはブラインドホールでハザードの谷が隠れていてOBになることもあります。“ナイスショット!”はコースをよく知ったキャディさんにお任せしましょう。ナイスショットの声をかけたいときは、結果をよく見てからにしましょう。
9.プレー中やランチタイムに仕事の話をしない
ゴルフのラウンド中に仕事の話をするのは禁手です。ゴルフ接待はゲストにゴルフを楽しんでもらうことが目的です。どうしても相談したい仕事の話があるときは、ラウンド終了後の食事のときに話しましょう。初めての顔合わせゴルフです。無粋なことは控えましょう。
10.ランチタイムでのマナー
お昼休みのランチの席にはゲストや上司よりも先に着いて、景色の良い窓際のテーブルを押さえておくと喜ばれますよ。ゴルフ場のレストランは景観がいいロケーションを選んでいるので、ゲストには景色のよく見える席をおすすめしましょう。事前にゴルフ場の自慢のランチを調べておくとか、ホームコースならおすすめメニューを紹介しましょう。ランチタイムに仕事の話をするのもマナー違反です。ゲストから話が出ない限りは、午後のラウンドに向けて軽い話題にとどめましょう。
11.仕事の話はお風呂上がりの懇談のとき
一汗流したお風呂上がりは軽い食事と懇談の時間です。ゲストもホストも気分がほぐれていろんな話が弾むひととき。ざっくばらんな話ができる雰囲気であれば、この場を借りて仕事の話をするのが良いでしょう。先方から仕事の話に水を向けられるようだと大成功ですね。会社では聞けない話がたくさん手に入るかもしれません。
12.お見送りとアフターフォロー
ゲストのゴルフバッグを車に運んで、玄関でお見送りを済ませたらお勤めは終わりです。翌日か、週明けの午前中には相手の企業に御礼に伺いましょう。
「次回は私のホームコースにぜひお二人をご招待させてくださいよ!」
先方から御礼の言葉とこんなコメントをいただいたら、今回のゴルフ接待は大成功といえるでしょう。
さいごに
広告代理店で長年接待を経験した筆者が、ゴルフ接待の極意について、事前準備とラウンド当日に分けて紹介しました。当日はホスト役をしっかり務めることも大切ですが、ホスト自身も自然体でプレーを楽しむことが何よりも大切です。ゲストに喜んでもらえるようこちらの記事でお伝えしたことをしっかり実践して、ゴルフ接待を成功させましょう。