アメリカ生まれのプレミアムなゴルフクラブメーカー「PXG(ピーエックスジー)」。ブラック&シルバーの精悍なデザインとハイパフォーマンスで知られる彼等は、元々ウッドやアイアンの評判が良いブランドだが、実はブランド発足当初からパター開発にも注力。ブランドの出自がクラブフィッティングを前提としていることもあり、様々なストロークタイプに対応するバリエーション豊富な「BATTLEREADY」シリーズと、セカンドラインともいうべきリーズナブルな「0211」シリーズの二つを展開し、ゴルファーの新たな選択肢として人気となりつつあるブランドだ。この記事では、PXGパターの選び方やおすすめモデルについても紹介します。
PXGとは
「PXG」とは、「Parson’s Xtreme Golf(パーソンズ・エクストリーム・ゴルフ)」の略称。2014年9月にIT企業「GoDaddy」などで財をなした米国メリーランド州生まれの資本家ボブ・パーソンズ氏により、米国アリゾナ州・スコッツデールで設立された新興のゴルフクラブメーカーだ。
日本のみならず、世界のゴルフクラブ市場は近年、アメリカの老舗ゴルフクラブメーカーで、巨額の開発資金を持つグローバルカンパニーの「キャロウェイゴルフ」、「テーラーメイド」、「ピンゴルフ」による3強がゴルファーの支持を集める寡占状態にある。旧くから中古市場が充実してきた日本の中古ゴルフクラブの世界にあっても、これらの製品が人気と相場を牽引している。
そのような市況にあって、新興ブランドながら、PXGは近年最も成功した新興クラブメーカーといって過言ではないだろう。その理由は大きく3つ挙げられる。
1.素材、コスト、期間の制限を設けない開発思想
一般にゴルフクラブメーカーも企業である以上、商品の開発にあたり、リリース時期が設定され、予算の枠内で、開発生産が行われる。毎年、一定の時期、定期的な販売サイクルに併せるようにクラブメーカーから新作がリリースされるのはゴルファーならご承知のことだろう。
PXGがユニークだったのは、創業にあたり、代表のパーソンズ氏はこうした既存メーカーの販売慣例にとらわれることなく、開発担当のデザイナーに”ゴルファーの夢を叶えるようなクラブを作ってほしい。そのためには、コストと時間の制約はしない”という方針を掲げたことにある。
これにより、PXGの開発担当は自由に素材を吟味し、新たな製法にチャレンジすることができたことで、ナショナルブランドと呼ばれる大手ゴルフクラブメーカーの製品を凌駕するようなハイパフォーマンスを、驚くほどの短期間で初代モデルに搭載してみせたのだ。
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ゴルフギアメーカーの多くが、毎年1月にハワイで開催されるPGAツアーの実質的な開幕戦「ソニーオープン」を新作プロモーションの場として、ここに新作のリリース時期を合わせている一方で、PXGのリリースはこれに沿っては行われていない。既存の製品を超えていなければ製品化しない、そのためのコストは惜しまない。こんなことができるのも、オーナーが大富豪のパーソンズ氏あってのことだろう。
コストに制限を設けないことは一方で、製品価格の高騰と表裏一体だ。このためPXGは設立当初からゴルフクラブとしては高価格帯のモデルとなり、14本フルセットで揃えれば100万円以上、希少性や人気、高価格であることから、発売当時は中古クラブの販売店に多くの偽物が出回ったことも記憶に新しい。設立当初からプレミアムなゴルフクラブという立ち位置を鮮明にしたのだ。おそらくパーソンズ氏は性能が良ければ高価格でも欲しいユーザーはいるということを確信していたのだろう。
こうした当初のブランディングが、後にセカンドラインとして展開することになった「0211」シリーズに”あのPXGがリーズナブルに買える”という印象をユーザーに与えていることも間違いない。
2.最先端テクノロジーと機能を主張するデザイン
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コストや時間の制約がないなど恵まれた開発環境で生み出されるPXGのゴルフクラブは、2014年のブランド発足直後から画期的なアイデアに溢れ、ゴルファーを魅了する存在であり続けている。
初代モデルでゴルファーの度肝を抜いた、ソールの外周部をぐるっと取り囲むように、ビス形状の調整ウェイトを配したウッド類。中空構造の内部に樹脂を充填したアイアンは、機能性はもちろん、見た目にもこの新興ブランドが只モノではない印象をゴルファーに与えるのに十分だった。
特に中空構造のアイアンは、後に大手ギアメーカーが同種のテクノロジーを搭載し訴訟にまで発展したことは記憶に新しい。彼等はゴルフクラブにおいて創業わずか10年弱で数多くの特許を取得するテクノロジーカンパニーでもあるのだ。
〝よく球が上がって、よく飛び、より打感が柔らかく、テキサス州ほどの広い芯をもち、世界で最も美しく、最もやさしいクラブが欲しい”。自身が熱心なゴルファーであり、年間2000万円以上をゴルフクラブにつぎ込むゴルフクラブマニアでもあったパーソンズ氏がオーナーをつとめるブランドだったことが、現在まで続くPXGのテクノロジー重視のDNAとなっているのだ。
また、ブラック&シルバーという統一感のあるカラースキームやデザイン性や世界観もPXGを特徴づける点。ドライバーなどのモデルに配される数字4桁のネーミングは、かつてパーソンズ氏が所属した海兵隊の符合などから着想を得ているものであり、パターのモデル名である『SPITFIRE』なども第二次大戦で名を馳せた米国の戦闘機名など、これほどオーナーの世界観が反映されているブランドも珍しい。
「GEN〇~」と表現される世代別モデルも、モノトーン基調の一貫したデザイン性から、旧さを感じさせず、オーナーの所有感を満たしてくれる。
3.クラブフィッティングでゴルファーに最適な一本を提供
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PXGが特別であった最後の理由は、その販売戦略にある。そもそもPXGのゴルフクラブは設立当初からクラブフィッティングを前提として開発されてきた。一般的なゴルフクラブメーカーの製品は、ターゲットとするユーザーに合わせた、標準仕様を吟味し、販売される。いわゆる”吊るし”状態の製品にユーザー側が合わせる必要がある。
だがPXGは、創業者であるパーソンズ氏が〝プロによるクラブフィッテングを介してこそ、ゴルファーのパフォーマンスを最大限に引き出せる”という考えがあった。完成品のクラブではなく、ユーザー一人ひとりに合ったスペックをプロが見立てて、徹底した品質管理の下に精密に組み立てる。アメリカ本国にあるPXGの本社には選任のフィッターとクラフトマンが常駐し、最先端の弾道計測やオーダーから一貫した生産体制が整えられているという。
日本には、いわゆる”地クラブ”のように、ヘッドパーツやシャフトなどを好みで選択し、地場のゴルフ工房などで仕立てるクラブフィッティングの文化が古くから確立しているが、アメリカ生まれのブランドとしては、こうした取り組みは極めて異例だ。
ブランド設立以前、パーソンズ氏は、米国発祥で、ツアープロのクラブフィッティングなどでも知られるフィッティングスタジオ「クールクラブス」の常連で、自身にマッチしたゴルフクラブを探求してたこともあり、こうした思想を持ちえたのだという。
PXGのゴルフクラブが、カテゴリー毎に豊富なヘッドバリエーションを持ち、ウェイトの調整幅を多彩に用意するなど、他に類を見ない調整機構を標準で備えているのも、こうしたフィッティング重視の思想がブランドに受け継がれているためなのだ。
上に挙げたように、PXGは既存のゴルフクラブメーカーとは異なる発展を遂げてきたことがお分かりいただけただろうか。その一方で、彼等は従来のゴルフクラブのプロモーション手法も抜かりなく行ってきた。
ブランド発足当初から、PGA、LPGAの実力派プロを多数アンバサダーとして招集。メジャーチャンプのザック・ジョンソン、当時米国女子ツアーでトッププロの一角だったリディア・コー(※現在は契約終了)ら、そうそうたる顔ぶれを誇り、現在でもUSPGA12名、USLPGA10名と契約を結んでいる。そのほとんどが、ボールを除くクラブセッティングのほとんどをPXGとし、ゴルフウェアまでのトータルで契約している点も見逃せない。
一般にゴルフクラブメーカーと用具契約するプロゴルファーであっても、ドライバーなどのウッド類以外や、ショートゲーム以外といった、特例を設けた契約が多い中で、これは異例といえる。提供する製品の性能はもちろん、ツアー会場でプロを支えるレップの実力やサポート体制、破格の契約条件を選手に提示できる”力”がPXGにはあるのだろう。
そんな比類なきクラブメーカーであるPXGのクラブにあって、近年ゴルファーから注目され始めているカテゴリーがパターだ。
PXGパターは「バトルレディ」と「0211」
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ドライバーからパターまで、フルラインアップで展開しているPXGにあって、パターも他の製品カテゴリー同様、多様なヘッドバリエーションとウェイト調整を始めとする調整機能による、フィッティング性に優れたモデルという位置付けは共通だ。
現在PXGパターは大きく二つのラインで構成されている。プレミアムなクラブメーカーらしい削り出しのハイエンドライン「BATTLE READY(バトル・レディ)」シリーズと、「0211 PUTTER」シリーズだ。
ブランド発足当初からラインアップされていたPXGパターは、他社製のプレミアムパターと共通する、CNCミルドの削り出し製法、素材に上質なステンレスを採用した他、前述したウェイトによる多彩な調整機構を備えている点をのぞけば、癖のないオーセンティックなパターではあったが、PXGのユーザー以外があえて選びたくないほどの魅力があるかは、評価が別れるところだった。
そんな状況が変わったのが2020年。従来から展開してきたパターのシリーズを新たに「バトル・レディ」とし、シリーズのリブランディングを敢行。フェースミーリングや調整用ウェイトシステムの見直しに始まり、大型のタングステンウェイトとの複合構造の採用によるMOI(慣性モーメント)の最大化などテクノロジーを積極投入したことで、フルモデルチェンジともいえる変貌を遂げたのだ。
ドライバーやアイアンのシリーズに比べ、比較的リーズナブルで戦略的な価格設定(※メーカー直販サイトで5万円弱)も、競合する「スコッティ・キャメロン」の「ファントム」シリーズの市場価格(約6万円弱)に対し、PXGに憧れを持つユーザー予備軍の注目を集めるのに十分だった。
何より圧巻だったのは、パターネックのホーゼル部分をヘッド本体とセパレートした交換タイプとし、多彩なバリエーションを設けたことだろう、ベントやクランクネックなどの他、プロやアスリートゴルファーに好まれるセンターシャフトや、ブライソン・デシャンボーの使用で一時期話題となったアームロック用シャフト(強いハンドファーストでのストロークでもスクエアにインパクトしやすいロフト角7度)に、ヒールシャフテッド(”スパイダーブーム”の火付け役となったショートスラントネック)など、革新的なホーゼルシステムを投入したのだ。
これによりバトル・レディシリーズは、いわゆるフェースバランスからトゥハングまで、好みのヘッド形状のまま、ユーザーのストロークタイプに合わせてホーゼルを選択し、重心アングルの調整が可能となり、フィッティング重視の姿勢をより鮮明にした。
1つのヘッド形状に対して、複数のホーゼルタイプを備えたラインナップの総数は、業界最大手であるパターブランド「オデッセイ」の旗艦シリーズにも匹敵する規模となり、フィッティングすれば、必ず自分にあった一本が見つけられる一方で、効率的な在庫管理も両立してみせたのだ。
一方、2021年に発表された0211パターは、先行リリースされたシリーズのドライバーやアイアン類同様、そのリーズナブルな価格がまずは話題を集めた。
メーカー公式のECサイトで3万円強、業界トップ「オデッセイ」パターの主力モデルと真向勝負な価格レンジに投入されたPXGパターの0211パターシリーズは、ブランドの代名詞である調整用ウェイトの不採用、303ステンレスの鋳造製法など、徹底的にローコスト化した上で、フェースはマシンミルドによる「ピラミッドフェースパターン」で精緻に仕上げることで、転がりの良さをキープし、飛行機の滑走路をモチーフとした独自のアライメント「ランウェイレチクル」も新たに開発。
PXGパター伝統の形状をラインナップに含めることなどで、「あのプレミアムなPXGパターがこの価格で買える」として、ブランディングを保ちながら、新たなユーザーの獲得に成功した。
とはいえ、バトル・レディに対し、0211パターがセカンドライン的な位置付けと考えるのは早計だ。2022年に投入されたカーボンとスチール複合シャフト「PXG M16パターシャフト」も選べることからも、0211パターは単なる廉価版ではない。
細かなフィッティングが必要なく、いわゆる吊るしの状態でも、試打したフィーリングが良く、構えやすく感じるモデルが見つかるのであれば、PXGのテクノロジーに手軽に触れられ、”マイファーストPXG”を手に入れられるという意味でも、0211パターを選ぶ意味は小さくないだろう。
反対に、「大型マレットでもストロークのアークが大きめで、感性を出したい」、「ブレードタイプでも直線的なストロークしたい」など、パターに対して繊細な感性を持っているゴルファーや、明確なパター選びの指針を持つゴルファーなら、バトル・レディシリーズの多彩な調整機能がきっと応えてくれるはずである。
ブレードから大型マレットマレットまで、PXGパターの旗艦シリーズ「BATTLE READY」シリーズ11モデル
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初代PXGパターである「GEN1」から「GEN2」を経て、それらをブラッシュアップした「バトル・レディ」へと受け継がれた、PXGパターの旗艦シリーズは、現在、ブレード型から高MOIの大型マレットまで、11モデルが展開されている。
いずれのモデルにも、ヘッド重量やバランス調整のためのウェイトシステム「ペリメーターウェイティングテクノロジー」、フェース中央に向かってピラミッド型のパターンのサイズを調整することで、球の転がりやスキット(インパクトで浮いたボールが順回転するまでの距離)の最適化、打感などに統一感をあたえる「ピラミッドフェースパターン」といった、PXGパター独自のテクノロジーが全部入りだ。
ブレード型としては、伝統的なL字型パターを思わせる「DAGGER+」、いわゆる”ピン型”、「アンサー2」に近い直線的なフランジ形状をもつ「BRANDON」と、そのピン型形状のフランジを後方へストレッチさせたワイド版「CLOSER」を用意。
いずれも構えやすいオーセンティックなブレード形状ながら、標準で大型のタングステンウェイトとステンレスまたはアルミとの複合構造を採用しており、見た目以上の高いMOIが魅力。打点ブレによる方向性や転がりの違いによるミスをサポートしてくれる。
マレットとしては、PXGパターの定番形状ともいえる後方フランジが八の字にストレッチした「SPITFIRE」、いわゆるツノ型パターの「BAT ATTACK」、小型マレットの「HERCULES」があり、寛容さはキープしつつ、ストロークにはある程度感性を求めるゴルファーにフィットさせている。
大型のマレット形状でPXGパターで最大限テクノロジーの恩恵を受けたい層には、ソールの底面後方ぎりぎりの位置にウェイトを配し、高いアライメント性と低重心を両立した「RAPTOR」、前方に航空機グレードのアルミニウム、後方にタングステンを集中配置しシリーズ随一の高MOIを実現している「BLACKBIRD」、ヘッド後方外周にタングステンを配した高MOIでいわゆる”スパイダー”に近い「BLACKJACK」、ソールの前寄りに4つのウェイトポート、後方にタングステンを配した超低重とボールを思わせるディスク型のアライメントが特徴的な安定性重視の「ONE&DONE」を用意。
モデルそれぞれには、ユーザーのストロークに合わせて最適なホーゼルが選択でき、直線的なストロークに合うフェースバランスや、アークの大きいストロークにマッチするトゥハングなど、構えた見た目を大きく変えることなく、フェースアングルを調整できるのが他社のパターには見られない特徴だろう。
シンプルにパフォーマンスを追求した5モデルから選ぶ、PXGパター「0211パター」
PXGパターならではの機能性やデザインを踏襲しつつ、素材や製法、搭載するテクノロジーを厳選することで、リーズナブルな価格を実現した0211シリーズのパター。現行で5つ用意された各モデルには、PXGブランドならではの調整機構こそ非搭載ながら、航空機の滑走路の誘導灯を思わせる独自のアライメントシステム「Runway Reticle(ランウェイレチクル)」 と、特許取得のミルドフェース「ピラミッドフェイスパターンテクノロジー」でPXGパターならではの転がりの良さ、安定性を獲得している。
PXGパターならではの伝統である、戦闘機の名機などから名付けられたユニークなモデル名が印象的なモデルは、ピン型のブレード形状で、クランクホーゼルの「O211 BAYONET」。伝統的なブレード形状でソールをワイド化しつつ、ブレード長はコンパクトに抑えた操作性に優れる「0211 HELLCAT」、PXGパターを代表するモデル「MUSTANG」を思わせるフランジのみストレッチした「0211 CLYDESDALE」、伝統的なL字マレット形状の「0211 V-42」、シリーズで最もヘッド形状が大きく、ヘッド重量も重めで抜群の安定感を誇る「0211 LIGHTNING」など個性的な5つを用意。
ウェイト調整やホーゼルはヘッド形状ごとに固定式で変更こそできないものの、ヘッド重量は軽いタイプと重めなタイプで30gもの開きがあり、ブレードタイプは操作性を、マレットタイプは安定感を重視した設計となっている。
PXGパターの選び方
パターはゴルフクラブで唯一、アマチュアとプロが同じスペックでも使うことができるクラブだ。極端な話、どんなに個性的なヘッド形状であろうが、不格好なストロークで再現性がなかったとしても、結果としてカップインさえするのであれば、それは自身にとって最高のパターといえる。とはいえ、そこにはいくつかの基本、定石もある。2つのシリーズで、合計16モデルも用意されたPXGパターから、後悔しないモデル選びの基本をいくつか挙げておきたい。
1.ロングパットなどパッティングの距離感を出しやすいブレード
現代のパターは20年程前のパターに比べてクラブ重量が重くなっている。これは重いパターの方がストロークが安定し、軌道も安定しやすいため。一方で、慣れの問題もあるが、重すぎるヘッド重量のパターは繊細なタッチを出しにくくなる。0211パターの「O211 BAYONET」は、標準状態でヘッド重量が軽めに設定されているため操作性に優れており、現代のトレンドに合わせてヘッド重量が重めなPXGパターにあって、距離感が合わせやすい傾向がある。
2.打点が左右にブレるなら、高MOIなモデル
プロとは違い、アマチュアゴルファーは打点が一定しないことがほとんどだ。特に左右方向の打点ブレは、インパクト時のフェース向きを狂わせ、方向性が悪化するのはもちろん、ボールに余計なスピンが生まれて球の転がりが悪く距離感も合わない、といったミスにも繋がる。打点がブレてもヘッドがブレにくい、バトル・レディシリーズの「ブラックバード」や0211パターの「0211ライトニング」といった高MOIなモデルの方がマッチするだろう。
3.大型マレットでプッシュのミスが出るならホーゼル調整可能なモデル
いわゆる”まっすぐ引いて、まっすぐ出す”、ストレート軌道でオートマチックにパッティングしたいゴルファーに合うとされるマレットタイプ、ダブルベントなどのフェースバランスのパター。だが、なぜかミスする時は決まって右にプッシュしがち、というゴルファーは少なくない。そんなゴルファーにはバトル・レディシリーズの「バットアタック」がおすすめ。ホーゼルの調整でフェースアングルを、フェース面が真上を向くフェースバランスから、ややトゥが下がるフルトゥハング、トゥが45度近くまで下がるトゥハングなど、ストロークのタイミングや軌道のアークの強さに合わせて選べる上、他のマレット型に比べて重心が深すぎず、ヘッドのブレにくさと操作性のバランスに優れている。
4.方向性が悪いならアライメント重視のモデル
プロにくらべて、アマチュアゴルファーはターゲットに対して正確にアドレスできていないことが多い。すなわち、方向性が悪いと感じるゴルファーなら、まずはターゲット方向にフェースを向けやすいパターを選びたい。3本のラインとボールを思わせるディスク型のアライメントを持つバトル・レディシリーズの「ワン&ダン」、極太ホワイトラインとセンターラインの「ラプター」といった大型ヘッドを検討したい。
5.ショートパットで手が動かないなら、シリーズ最強高MOIモデル
なんでもないショートパットも緊張して、手が動かない。そんなゴルファーには前方をアルミ、後方にタングステンを搭載したバトル・レディシリーズ最大の深重心設計と、標準で370〜415gに及ぶヘビー級のヘッド重量を誇る「ブラックバード」を。高MOIヘッドにより、ストロークが短くてもインパクトでボールの転がりが良く、打点ズレによるヘッドのブレも僅か。スペックがもたらす安心感がさらなる好循環を生むはずだ。
以上のような傾向はあるものの、始めは合わないと感じても、長く使う内にフィットしてくるパターもある。何を選んでも間違いとはいえないし、絶対的な正解もないが、あえて付け加えるなら、特性の異なるスペアパターを複数用意し、交換しながら使っていくよりも、気に入ったパターを長く使う方が、ミスパットの原因がパターとのマッチングによるものなのか、自身のストロークの変化なのか、判断しやすい上、愛着も沸く。
そうした意味でもフィッティング性に優れ、PXGパターのモダンテクノロジーを満載した旗艦シリーズであるバトル・レディシリーズを選んだ方が、満足度が得やすいことは間違いないだろう。
PXGパターのおすすめモデル7選
ここまで押さえてきたPXGパターのポイントと、ユーザーの口コミ、筆者の印象などから、現行ラインアップから今買うべきPXGパターのおすすめモデルを紹介。
1.PXG MUSTANG バトルレディ パター
PXGパターを象徴するデザイン
オーセンティックなブレード型パターのフランジ両端を僅かに後方へストレッチさせた「マスタング」は、PXGパターの元祖ともいうべきGEN1時代からデザインを踏襲する定番形状。当初はブレードの両端にウェイトを搭載していたが、現行モデルではせり出したフランジ部分の下端にタングステンが搭載され、以前のモデルに比べ、形状はそのままに大幅な高MOI化を実現している。4つ用意されたホーゼルバリエーションが、様々なストロークタイプにマッチしやすい点も魅力。
- ・PXGパターを使ってみたい、クランクホーゼルのブレード型パターに慣れた上級者
- ・ステンレス削り出しならではのソリッドな打感を好むゴルファー
PXG MUSTANG BATTLE READYの仕様・製品情報
モデル | PXG MUSTANG BATTLE READY |
ヘッド形状 | ブレード型 |
ホーゼルタイプ | プランバーズ(他3種) |
オフセット | フルシャフト |
ロフト角 | 3°(アームロックは7°) |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 370 |
2.PXG BLACKBIRD バトルレディ パター
歴代PXGパターで最も高MOIのブレにくさ
バトル・レディシリーズの追加モデルとして登場した、アメリカの長距離偵察機からその名をとった大型マレットパター。ヘッド前方に軽量高剛性な航空機グレードのアルミ二ウム、後方底部に高密度タングステンを配した複合構造と、標準で370g以上ある重めなヘッド重量により、歴代PXGパターで最も高い慣性モーメントを実現。同シリーズのマレット「 BLACKJACK」、「ONE&DONE」、「GUNBOAT」などに比較して重心位置が約5.1mm深い位置にあり、安定したストロークと球の転がりの良さを発揮する。構えた際の造形は意外にシンプル、削り出しならではの塊感のあるデザインも美しい。調整用のウェイトが4箇所搭載可能で、スイングバランスの調整幅も大きい。
- ・ストローク軌道が安定しないゴルファー
- ・打点が左右にブレて方向性や距離が安定しないゴルファー
BLACKBIRD バトルレディパターの口コミ
BLACKBIRD バトルレディパターの仕様・製品情報
モデル | BLACKBIRD バトルレディパター |
ヘッド形状 | マレット |
ホーゼルタイプ | ダブルベント |
オフセット | ハーフシャフト |
ロフト角 | 3° |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 370 |
3.PXG BRANDON バトルレディ パター
伝統的なブレードにPXG最新テクノロジーを投入
ピンのアンサー2やスコッティ・キャメロンのニューポート2など、伝統的なブレードパターを好むゴルファーにマッチ。303ステンレス削り出しボディを直線的な造形で仕上げたボディには、ブレードの左右両端底部、構えた際に違和感を与えない位置にタングステンウェイト、ソール両端に2つの交換式ウェイトが搭載され、見た目以上の高MOIを発揮し、打点ブレに強い。標準仕様ではクランクネックを採用し、比較的トゥハングを抑えられており、フェースの開閉が少ないストレート軌道のゴルファーにもマッチする。
- ・伝統的なブレード形状のパターを好む人
- ・大型マレットを構えにくく感じるゴルファー
- ・ステンレス削り出しのソリッドな打感を好む人
PXG BRANDON バトルレディ パターの仕様・製品情報
モデル | PXG BRANDON バトルレディ パター |
ヘッド形状 | ブレード |
ホーゼルタイプ | プランバーズ(他3種) |
オフセット | フルシャフト |
ロフト角 | 3°(アームロックは7°) |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 360 |
4.PXG CLOSER バトルレディ パター
ツアー人気も高いワイドなブレード
ブレード型の見た目を維持したまま、ソールをワイドにすることでマレット型の安定感も持たせたツアーでも人気の高いデザイン。素材はアルミニウムとタングステン、ソール両端にウェイトも搭載しており、ヘッドサイズ以上に高いMOIを発揮する。ソールに配されたスカルに刻まれた数字の「26」は、ブランドの創業者ボブ・パーソンズ氏がベトナム戦争へ、米国海兵隊第26連隊のライフル銃兵(0311)として従軍したことに由来する。プランパーズ(クランク)ネックとのマッチングが良好で、一般的なブレード型よりも重心が深めにあるのでトゥハングも小さく、ストロークがストレート軌道でも、フェースが開閉するアーク軌道のゴルファーにも対応しやすい。
- ・ブレード型を使っているがより寛容性のあるヘッドを求める人
- ・マレット型だと構えにくく感じる人
- ・ブレード型は難しく感じているゴルファー
PXG CLOSER バトルレディ パターの口コミ
PXG CLOSER バトルレディ パターの仕様・製品情報
モデル | PXG CLOSER バトルレディ パター |
ヘッド形状 | ブレード(ワイド) |
ホーゼルタイプ | プランバーズ(他3種) |
オフセット | フルシャフト |
ロフト角 | 3° |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 370 |
5.PXG BAT ATTACK バトルレディ パター
進化を続けるPXGパターのツノ型
左右後方にツノ状に伸びる「アウターウイング」と、ゴルフボールの幅に合わせた中央のキャビティ構造が、「オデッセイ」の定番パター「No.7」を思わせるマレット。左右のツノ部分の底部にはタングステンとウェイトポートを備え、高い慣性モーメントを発揮する一方、一般的な深重心の大型マレットに比べ、ある程度操作性も備えており、万人が扱いやすい。
- ・最新パターを使ってみたいブレード型に慣れたゴルファー
- ・大型マレットではヘッド後方が底当たりするような感覚がある人
PXG BAT ATTACK バトルレディ パターの仕様・製品情報
モデル | PXG BAT ATTACK バトルレディ パター |
ヘッド形状 | マレット |
ホーゼルタイプ | プランバーズ(他3種) |
オフセット | フルシャフト |
ロフト角 | 3° |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 380 |
6.PXG 0211 V-42 パター
PXGパターが手がけるクラシカルなL字マレット
かまぼこ形状のマレットとヒールシャフトによる伝統的なL字パターを、PXG0211シリーズのテクノロジーで昇華したモダンパター。L字マレットは国内男子ツアーの石川遼選手がプロデビュー前後に使っていたことでも知られる日本で人気の形状。新開発のアライメント「ランウェイレチクル」、PXGパターの旗艦モデル、バトルレディシリーズにも採用さえるミルドフェース「ピラミッドフェースパターン」を搭載しながら、ウェイト機構などを非搭載とすることで価格をリーズナブルに抑えている。
- ・フェースを開閉し、アプローチ感覚でパッティングしたい人
- ・PXGパターに興味のあるベテランゴルファーに
PXG 0211 V-42 パターの仕様・製品情報
モデル | PXG 0211 V-42 パター |
ヘッド形状 | マレット |
ホーゼルタイプ | プランバーズ(他3種) |
オフセット | フルシャフト |
ロフト角 | 3° |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 380 |
7.PXG 0211 CLYDESDALE パター
PXGパターの人気形状をお手軽に
PXGパターの人気モデル「MUSTANG」を彷彿させる左右のフランジ部が後方に伸びたブレード型。細身のブレード型だが、0211パターシリーズ中で、最もフェース長が長めに設計されている他、ヘッド重量もやや重めな365gで、構えると安心感があり、打点がズレてもヘッドがブレにくい。アライメントの「ランウェイレチクル」、マシンミルドの「ピラミッドフェースパターン」などを採用し、PXGパターならではの性能と、存在感のあるデザインが魅力。
- ・PXGパターを初めて使ってみたいゴルファー
- ・ブレード型だが、寛容性もある程度欲しい人
- ・プッシュしやすく、ハンドファーストにインパクトしたい人
PXG 0211 CLYDESDALE パターの口コミ
PXG 0211 CLYDESDALE パターの仕様・製品情報
モデル | PXG 0211 CLYDESDALE パター |
ヘッド形状 | ブレード |
ホーゼルタイプ | クランクネック |
オフセット | フルシャフト |
ロフト角 | 3° |
ライ角 | 70° |
標準ヘッドウェイト (g) | 365 |
PXG製品を購入する際の注意
PXGのゴルフクラブは、日本へ正式上陸した当初、フィッティングを前提としていたことや購入できる販売店が限られていたこと、価格帯が高価だったことから、一部のゴルフクラブマニアを除けば、注目度に比べてユーザーになかなか普及しなかった。
一般のゴルファーが目にするのは、国内の正規販売モデルより、並行輸入の販売店によるUS仕様のモデルや、中古クラブ販売店での中古品、インターネットのオークションサイトやフリマサイトという状況が続いてきた。流通量がおちついてきた現在も、手軽にPXGパターを入手するなら、インターネットでのECを活用するのが一番だが、いくつか注意点もあるので指摘しておきたい。
1.中古のPXGは模造品に注意
PXGは高価格帯のプレミアムブランドということで、商品を確認する手段が限定される.オークションサイトやフリマサイトには多くの模造品、偽物が出回っている。悪意を持って出品する業者から、それと知らずに購入したユーザーの再出品などもあり、本物と偽元との見分け方といったコンテンツがゴルファーの関心を集めてきた経緯がある。メーカーの公式サイトにも模造品に関する注意がされている。
現在では、PXGのメーカー公式サイトにECサイトがオープンし、以前に比べ、販売価格もこなれて買いやすくなったとはいえ、まだまだリスクはある。購入する際には、PXGの国内正規販売店や、販売実績のある信頼できるECサイトなどを利用したい。
2.フィッティングモデルのスペック
PXGはクラブフィッティングで真価を発揮するクラブだ。そのため、量販店などで購入できる標準仕様と比べ、フィッティングを経たPXGのゴルフクラブの中には、使用するユーザーに合わせて、極端なスペックとなっている場合もある。中古販売店で中古のPXGのクラブを購入する際には、クラブ重量やシャフトのフレックスなど、スペックを十分確認することを忘れずに。
PXGフィッティングスタジオ情報
本稿の冒頭でも触れたように、PXGのゴルフクラブはそもそもクラブフィッティングを前提として設計されたものだ。モデルごとに多様なヘッドバリエーションを持ち、交換用のウェイトシステムを始め、弾道調整機構を常にブラッシュアップし続けてきた背景には、ブランドの祖創設者であるボブ・パーソンズ氏自身が、クラブフィッティングのスタジオに通い詰め、ゴルファーに最適なゴルフクラブを、プロによるフィッティングで導き、パフォーマンスを最大化してきたことと大いに関係している。つまり、PXGの真価を味わうためにはクラブフィッティングは欠かせない存在なのだ。
ブランドの本社、ヘッドクオーターのあるアリゾナ州のスコッツデールには、ツアー準拠の弾道計測「トラックマン」をはじめとする最先端の計測機器類を設置。契約するツアープロも担当する専属フィッターやクラフトマンを常駐させているという。
現在、日本国内で、彼らが公式にフィッティングスタジオとしてお墨付きを与えているのは下記に挙げる二か所のみ。PXGのゴルフクラブを使ってみたいと思うなら、まずは下記のいずれかのスタジオを利用してみるのが良いだろう。
本場譲りのフィッティング「PXGTOKYOフィッティングスタジオ」
東京・港区赤坂にある屋内型のスタジオ「PXG東京フィッティングスタジオ」は、本国アメリカで開発されたPXGのクラブフィッティングシステムをいち早く日本に導入した先駆者的位置付けだ。
「クールクラブス」や 「トゥルースペックゴルフ」といったアメリカ生まれのクラブフィッティングスタジオから生まれた知見と、日本の最先端技術や海外の軍事技術までも用いたゴルフの科学分析機器を最大限に活用したフィッティングメソッドは唯一無二。世界でここだけの最先端のPXGフィッティングを体験できる。
ドライバーからウッド、アイアン、ウェッジ、パターまでPXGの現行ラインアップのヘッドが用意されている他、主要メーカーのカスタムシャフトがスペック違いで整然と並び、専門のトレーニングを受けたクラブフィッターが、スイングに最適な組み合わせとスペックを導いてくれる。
完全予約性となるフィッティングは、モーションキャプチャーの「GEARS」を用いた「GEARS-プログラム」と、弾道計測器トラックマンを使った「STANDARD-プログラム」の二種類が設定されており、カウンセリングから、スイングチェック、推奨クラブの提案までが最短で約1時間~1.5時間、ドライバーからウッド、アイアン、パターまでのフルアイテムで約4~5時間の長丁場。料金は前者が1万6500円〜、後者が1万1000円〜の有料制となる。
ブランドの世界観が表現されたショールームを併設しており、希少なアクセサリー類なども必見。本場譲りのプライベートなクラブフィッティング、PXGのクラブを検討しているなら一度は体験することをお薦めしたい。
information
PXG TOKYO FITTING STUDIO
〒107-0052 東京都港区赤坂9-5-12パークサイドシックスB1
TEL : 03-6459-2201 ※事前連絡で見学も可能。
https://tokyo.fittingstudio.jp/
PXGをアウトドアでフィッティングするなら「PXG大阪ドライビングレンジ」
PXGが屋外練習場をまるごとジャックしたような、オールブラックの外観とブランドロゴが印象的な「PXG大阪ドライビングレンジ」は、関西最大級300ヤードの広大なドライビングレンジを使い、「TRACKMAN4」など最新鋭の軌道測定器によるスイングデータと、実際の弾道をみながら、屋外でPXGの稀有なクラブフィッティングが体験できる点が最大の魅力といえる。
パターのストローク解析にはツアー準拠の「パットラボ」を使用する他、パターやウェッジフィッティングには、併設するパッティング&バンカーレンジが使用でき、実際の芝やバンカーでの感触を試せるなど、より実戦的なフィッティングが可能な点も特筆。
ドライバーからウッド、アイアン、ウェッジ、パターまで各テーマ別に1枠50分で5500円、またはそれらのフルセットなら150分、2万7500円という料金設定のフィッティングは予約制。
information
PXG OSAKA DRIVING RANGE
〒574-0012 大阪府大東市龍間308-1
TEL:072-869-0171
https://www.pxgosaka.jp/
どちらのフィッティングも、フィッティングで提案されたクラブは実際に、それぞれの店舗で購入することができる。購入した場合のフィッティング料金はクラブ購入価格に含まれる形となるため、フィッティングが実質無料となる点が嬉しい。