2021年2月19日に発売が発表されたキャロウェイとテーラーメイドの新作ドライバーと、2020年秋発売のテーラーメイドのTSi3/TSi2ドライバーについて、シングルプレイヤーの筆者がどのようなゴルファーに合うクラブなのか検証します。新作モデルは技術革新も相まって進化が非常に速く、特に直近で発表された新作モデルはこれまでの伝統に革新を加えた、新世代へのモデルへと変貌しています。クラブ選びの参考にしてみて下さい。
2021年キャロウェイドライバーEPICMAX/SPEEDドライバー
2本の柱からフレームへと進化
キャロウェイは2021/1/20に行った新作発表会で2021年モデル「EPIC MAX」「EPIC SPEED」「EPIC MAX LS」の3種類を発表しました。2017年より続く同社のフラッグシップモデル「EPIC」ブランドの新作です。
今回は大別すると3回目となるモデルチェンジで、最大の特徴として「JAILBREAK AI スピードフレームテクノロジー」を搭載しています。「EPIC」の特徴だった2本の柱である「JAILBREAKテクノロジー」から、AIが新たに解析・設計した「JAILBREAK AI スピードフレームテクノロジー」へと進化しました。 垂直方向のみならず水平方向の剛性を高め、フェースのたわみ量を最大化し、インパクト時のエネルギーロスを最小限に抑え、高初速・高弾道を実現。このAI解析・設計によりインパクト時の力が従来よりもフェースに集中し、ボール初速を上昇させています。
ソール面にはEPICの代名詞ともいえるグリーンの装飾が入りつつ、前身のモデルと比べてもシンプルな色合いが特徴で、上から見ると黒ヘッドが構えた際に大きな安心感を与える形状です。少し後ろ側が長く、直近モデルで増えている「シャローフェース」気味のフェースと言えるでしょう。
3種類のドライバーはプレーヤーのレベルに合わせて選択可能
今回発表されたモデルは「EPIC MAX」「EPIC SPEED」「EPIC MAX LS」の3種類がですが、それぞれに性能差と多くの特徴が表れています。
EPIC MAX
まず「EPIC MAX」は、初心者やアベレージゴルファー向きで、特に捕まりやすい設計をとっており、スライス傾向のあるゴルファーの打点をもとに設計されています。キャロウェイ最大級の慣性モーメントを実現させ、ミスに強く、球を捕まえることが苦手なゴルファーでも飛ばしやすいモデル設計となっています。また、可変ウェイトである「ペリメーター・ウェイト」を搭載しており、ご自身の球の出方に応じて設定変更を行うことができるモデルです。
EPIC SPEED
「EPIC SPEED」は、中級者層を中心に幅広いレベルのゴルファーに対応したアベレージモデルです。可変ウェイトはついていませんが、空気抵抗を減らす「サイクロン・ヘッドシェイプ」を搭載し、特にダウンスイング時の抵抗を減らす役割を果たします。また、「EPIC SPEED」は他モデルより重心が若干浅めに設定されており、重心が浅い分スピン量を安定させることができるメリットがあります。一方で初速のばらつきが大きくなるというデメリットもありますが、それをFLASHフェースで補う形とるため、初速とスピン量を両立させたいゴルファーにおすすめのモデルとなっています。
EPIC MAX LS
「EPIC MAX LS」は上級者向きのピーキーな設定ですが、実はその中にも優しさを共存させる、まさに今向きのモデルと言えるでしょう。元来アスリート系は、小さめのヘッドで操作性を持たせ、捕まりを抑えるといったモデルが多かったのですが、今回は「ある程度優しさを求めたい」というツアープロの要望から生まれたモデルですので、低スピンながら高い慣性モーメントを実現したモデルとなっています。可変ウェイトを搭載しているので、上級者モデルながらある程度幅広いゴルファー向けに捕まりを調整することも可能でしょう。
シャフトについて
標準装着の「TENSEI 55 for Callaway」に加え、カスタムシャフトとしてグラファイトデザインの「TOUR AD HD-6」、藤倉コンポジットの「Speeder EVOLUTION Ⅻ 661」、三菱ケミカルの「Diamana TB 60」の各シリーズが展開されています。「TENSEI」シリーズはシャフト重量が軽く、トルクも利いている為上級者でなくても使いやすいです。一方他の3つに関しては、「Diamana」が中元調子、「TOUR AD」は中調子、「Speeder」が先中調子とキックポイントが違います。「TENSEI」を除くシャフトはクラブ総重量が約15g重くなりますので、ヘッドスピードのある方にお勧めです。
こんな人におすすめ
「EPIC MAX」は、初心者やアベレージゴルファー、力に自信のない方や球が右に行きやすい方。「EPIC SPEED」は、ある程度球をヒットすることができる中級者層を中心に。「EPIC MAX LS」はアスリート系の上級者から、ある程度力に自信のある方におすすめ!
発売日 2021/2/19(予定)
キャロウェイEPIC MAX/EPIC SPEED/EPIC MAX LSドライバー商品情報
EPIC MAX | EPIC SPEED | EPIC MAX LS | |
ヘッド体積 | 460㏄ | 460㏄ | 460㏄ |
ロフト角 | 9/10.5°/12 | 9/10.5° | 9/10.5° |
長さ | Diamana 40 45.75 | Diamana 50 45.75
Tour AD HD-6/Speeder EVOLUTION VII 661/Diamana TB 60 45.5 |
TENSEI 55 45.75
Tour AD HD-6/Speeder EVOLUTION VII 661/Diamana TB 60 45.5 |
シャフト | Diamana 40(S SR R) | Diamana 50(S SR R)
Tour AD HD-6(S) Speeder EVOLUTION VII 661(S) Diamana TB 60(S) |
TENSEI 55 (S SR)
Tour AD HD-6(S) Speeder EVOLUTION VII 661(S) Diamana TB 60 (S) |
総重量 | 287~289g | 299g~318g | 303g~319g |
バランス | Diamana 40 D0 | Diamana 50 D2
Tour AD HD-6/Speeder EVOLUTION VII 661/Diamana TB 60 D1 |
TENSEI 55 D3
Tour AD HD-6/Speeder EVOLUTION VII 661/Diamana TB 60 D2 |
ライ角 | 59° | 58° | 57° |
2021年テーラーメイドSIM2ドライバー
新技術「フェース・カップ・フレーム」
テーラーメイドゴルフは、2021/1/20に行ったオンライン新作発表会にて、2021年モデル「SIM2」「SIM2 MAX」「SIM2 MAX D」の3種類を発表しました。テーラーメイドゴルフはナンバリングシリーズだったRシリーズ以降、多くのシリーズが発表されていますが、最新のSIMシリーズは2020年からのモデルで、今回は後継モデルに当たります。
ところが、今回は前作のSIMシリーズからヘッド形状を大きく変え、後継というよりは完全に別物のヘッド形状になりました。テーラーメイドの技術革新の賜物ですが、フェース・カップ・フレームといった各パーツを溶接ではなく接着だけでつなぎ合わせ、かつ強度の問題をクリアしたのが今回のモデルです。通常、各パーツを溶接により貼り付けますが、その際に「溶接バリ」という残留物により、余分な重量が掛かることが多くあります。今作の「SIM2」シリーズでは、溶接を行わないため余分な重量を含まずに、ヘッドの自由な重心設計を構築しました。 溶接に関してはこれまでのクラブでは当たり前のように使用されていた技術ですので、「溶接を無くした」という部分はテーラーメイドが初めて手を付けたことになります。
形状も非常に特徴的で、ソール部分の、テーラーメイドのカラーリングともいえるエメラルドブルーが目を引きますが、ヘッド後方が大きく飛び出て見えるデザインは直進性をイメージしやすく、構えやすい印象です。上からのぞき込むクラウン部分は、シルバーの縁取りがフェース面を際立たせ、非常に見やすい印象を覚えます。ヘッドは非常に大きいですが「シャロー」というほどでもなく、むしろ丸みを帯びた形は「ディープ」寄りの印象を受けました。
3種類のドライバーの性能の違いは?
SIM2
「SIM2」は重心を浅くしたことにより3モデル中最も低スピンで、アスリート向け仕様のクラブ設定となっています。構えた感覚もどちらかというとオープンアングルな設定で、時に左へのミスが怖いドローヒッターでも恐れることなく振り抜けます。また、スピン量が低くなることからある程度力のあるゴルファーに対しておすすめのモデルです。若干ピーキーな設定ではありますが、持ち球をコントロールできるゴルファーには非常に操作性の高いモデルと言えます。
SIM2 MAX
「SIM2 MAX」は「SIM2」と比較してソール後方のウェイトを重くすることにより、「SIM2」よりもスピンがかかりやすい設定となっており、幅広いレベルのゴルファーに対応しています。ですが、こちらもしっかりと球を捉えないと右に抜けやすいフェース系アングルの為、ある程度しっかり球をヒットできる方に向けたモデルです。従来のテーラーメイドのドライバーは、比較的球を捕まえに行きやすいモデルが多かったですが、今回は強くしっかりと叩いても左へのミスが軽減されるモデルが多い印象です。多少芯を外しても弾道への影響は少なく、高い球を打つことができるモデルと言えるでしょう。
SIM2 MAX D
「SIM2 MAX D」は慣性モーメントを高めて反発エリアを拡大したモデルで、上記の2モデルより捕まりやすく高弾道の球筋を実現します。少し力に自信のない方や、右へのミスが多いゴルファーにおすすめのモデルです。特にソール後方のウェイトは3モデル中1番重く、捕まり性能を高めるためにヒール寄りに設定、優しさを求めているモデルともいえます。シャローフェース気味の洋ナシ形状で、フェースアングルが若干左に向いています。スイートスポットも非常に広いので、芯を外しても強い球を打つことができ、高い直進性を持つモデルと言えるでしょう。
シャフトについて
標準装着の「TENSEI SILVER TM50」と「TENSEI BLUE TM50」1に加え、カスタムシャフトとしてグラファイトデザインの「TOUR AD HD-6」、藤倉コンポジットの「Speeder EVOLUTION Ⅻ 661」、三菱ケミカルの「Diamana TB 60」の各シリーズが展開されています。「TENSEI」シリーズは三菱ケミカルと共同開発されたオリジナルモデルで、「TENSEI SILVER TM50」が59g、「TENSEI BLUE TM50」が50gと9gの重量差があります。一方他の3つに関しては「EPIC」シリーズと同じシャフトが用意されており、クラブ総重量が標準装着と比べ約5~15g重くなります。
こんな人におすすめ
「SIM2」は球を捕まえることを得意とするドローヒッターや力に自信のある上級者やアスリートに向けたモデル、「SIM2 MAX」はある程度球をヒットすることができる中級者層を中心に、球が少し捕まらないフェードヒッターにおすすめ、「SIM2 MAX D」は少し力に自信のない、また球が上がり辛い、スライスが出やすいといった初中級者ゴルファーに向けておすすめです。
・発売日 2021/2/19(予定)
テーラーメイドSIM2/SIM2 MAX/SIM2 MAX Dドライバー商品情報
SIM2 | SIM2 MAX | SIM2 MAX D | |
ヘッド体積 | 460㏄ | 460㏄ | 460㏄ |
ロフト角 | 9/10.5° | 9/10.5° | 9/10.5° |
長さ | TENSEI SILVER TM50 (’21)45.75
Tour AD HD-6/Speeder 661 EVOLUTION VII/Diamana TB60 45.25 |
TENSEI BLUE TM50 (’21) 45.75
Tour AD HD-6/Speeder 661 EVOLUTION VII/Diamana TB60 45.25 |
TENSEI BLUE TM50 (’21) 45.75 |
シャフト | TENSEI SILVER TM50 (’21)(S SR R)
Tour AD HD-6(S) Speeder 661 EVOLUTION VII(S) Diamana TB60(S) |
TENSEI BLUE TM50 (’21) (S SR R)
Tour AD HD-6(S) Speeder 661 EVOLUTION VII(S) Diamana TB60 45.25(S) |
TENSEI BLUE TM50 (’21) R.SR.S |
総重量 | 306~310g | 295~313g | 約294~299g |
バランス | D2.5~D3 | D3 | D2.5 |
ライ角 | 59° | 56° | 56° |
2020年タイトリストTSi3/TSi2ドライバー
航空宇宙の技術を利用した「TSi」シリーズ
昨秋の新商品として注目を浴びたのが今や最もメジャーなメーカーと言えるタイトリストの「TSi2」「TSi3」の2モデルです。前作の「TS」からデザインも大幅に刷新された後継モデルで、イノベーション(革新)・イナーシャ(慣性)・インテグレーション(統合)・インパクト(衝撃)といった意味合いの「i」を追加したのが「TSi」シリーズです。前作から比較するとディープ型に変化している為、少しヘッドが小さく見えるかもしれません。特徴として、航空宇宙分野で使用された「ATI425」というチタン素材を使用することで、強靭で高弾性を実現しています。実はこの素材を使用しているのはゴルフ界ではタイトリストのみなのです。
「TSi」シリーズは高い慣性モーメントを実現することで、フェースのどの部分にあたっても適正なスピン量でたなを弾くことができ、フェースの反発係数検査を通してルール適合内の中でも最大値を出せるよう計算されており、ゴルファーの飛距離アップを助けてくれるクラブとなっています。
TSi2、TSi3共にアスリート向きのモデル
「TSi3」は前身の「TS3」の後継ですが、デザインや機能がかなり変化しています。可変ウェイトの「トラックシステム」を搭載し、今作では5通りにポジション調整を行えるようになりました。フェースはしっかりとしたストレート向きの構えで、自ら「曲げる」イメージを持つ人には非常に構えやすいモデルでしょう。フェードヒッターにもドローヒッターにも扱いやすいモデルとなっており、特にアスリートやトップアマ向けのセッティングと言えるでしょう。
「TSi2」の方が比較的許容性が高く、ある程度のミスにも耐えうる設計ですが、今作はかなりアスリート向きに仕上げた印象です。フェースもドロー設計ではなく、非常に構えやすい設計です。フェースターンが非常にしやすく、アスリート向きの中では少し優しいモデルで、中級者が1ランク上のレベルのクラブとして使用するにはいいのではないでしょうか。打球音がやや高く、弾き感とともに強い打感がするのも特徴です。吸い付かずにしっかりとはじくモデルと言えるでしょう。
シャフトについて
「TSi」シリーズには標準装着の純正シャフトが存在せず、カスタム用シャフトが標準となっており、ご自身に合ったシャフトを装着することが可能です。また、今作ではグラファイトデザインとパートナーを組み、「TOUR AD DI」、「TOUR AD XC」、「TOUR AD IZ」の3種類をプレミアムカスタムシャフトとしてラインナップしています。
「TOUR AD」シリーズは日本男子ツアーでも使用率No.1の実績を持ち、プロアマ問わず多くのプレーヤーが使用するグラファイトデザインの人気モデルシャフトです。今回プレミアムカスタムシャフトに選ばれた「DI」は発売から10年以上経つ人気モデルで、しっかり硬さのあるシャフトで上から叩いても低スピンの上に高弾道の球が出るのが特徴、「XC」一昨年リリースされたモデルで、スピンを抑えつつ弾道も抑えた打球が出るのが特徴、「IZ」は現在ツアー使用率No.1で、低い弾道で強い打球が出るのが特徴です。
こんな人におすすめ
「TSi3」は操作性を重要とし、球を打ち分けることに重きを置いたアスリートゴルファー向き、「TSi2」は更に飛ばしを求めたいアスリートから、ある程度しっかりと球を飛ばすことができる中級者向けのヘッドと言えるでしょう。
発売日 2020/11/13
タイトリストTSi2/TSi3ドライバー商品情報
TSi2 | TSi3 | |
ヘッド体積 | 460㏄ | 460㏄ |
ロフト角 | 9/10° | 8° /9° /10° |
長さ | TSP110 50/TSP322 55 45.5
Tour AD DI5(S)/Tour AD DI6(S) 45.0 |
TSP110 50/TSP322 55 45.5
Tour AD DI5(S)/Tour AD DI6(S) 45.0 |
シャフト | TSP110 50(SR S TourS)
TSP322 55(S TourS) Tour AD DI5(S) Tour AD DI6(S) |
TSP110 50(SR S TourS)
TSP322 55(S TourS) Tour AD DI5(S) Tour AD DI6(S) |
総重量 | 299~319g | 299~319g |
バランス | TSP110 50(D2)
TSP322 55(D3) Tour AD DI5(D1.5) Tour AD DI6(D2.5) |
TSP110 50(D2)
TSP322 55(D3.5) Tour AD DI5(D1.5) Tour AD DI6(D2.5) |
ライ角 | 58.5° | 58.5° |
まとめ
直近のモデルは各ゴルファーのレベルや持ち球などの特性に応じたクラブを選択することで、更なるレベルへと押し上げてくれるクラブが増えました。技術革新はまだまだ続いていますが、今後ゴルフに取り組むうえで、クラブの性能を頭に入れることが、上達の一つの手助けになるかもしれません。ドライバーは「最初の1打」に使う非常に重要なクラブで、その日のラウンドを左右するクラブです。どのクラブも非常に甲乙つけがたいですが、妥協せずにあなたに合った一本を選び抜き、ゴルフ生活の伴侶としてください。きっとあなたのゴルフライフに新しい光が差し込むことでしょう。